2018年2月16日 東京都千代田区立麹町中学校視察
2018年2月16日(金)9:30~12:30
WLBC関西学校プロジェクトリーダー澤田主催
記:澤田・木村
麹町中学校と言えば名門校としてご存知の方も多いだろう。卒業生もには有名人・著名人が多く、同窓会の影響力や思いが熱い学校である。
そんな麹町中学校に赴任して4年、学校を大きく改革してこられた工藤勇一校長にお話を伺った。

内容
工藤校長は、赴任して1年目の夏休みに全教職員から課題を吸い上げたら50項目あった。そこにさらに校長自ら付け足して総数500。赴任して4年間でこれを一つ一つ解決して行って今では残すところ150だという。
職員朝会はそれまで5分だったものを1分にした。連絡事項は見える化しており、赤青黒と色分けをしている。青は今日知っておくこと、赤は子供に伝えること、黒はその他。
運営委員会には各学年主任を入れず、4つある分掌の各長と管理職間の合意があれば、職員会議にかけずにスピーディに決定実行できるようにした。権限と責任を明確にすることで可能。
麹町中学校の最上位の目標は「世の中まんざらでもない!結構大人って素敵だ!」。最上位の目標がはっきりしているので、目的と手段が逆転していないかどうか常にそこに立ち返っている。

この目的をもって様々な斬新ないアイデアで学校が運営されている。
例えば
体育祭は学級対抗をやめた。見ている人を楽しませるためではなく運動が苦手な子供も楽しめる体育祭にしようということで、生徒会に企画運営は委ねた。教師が競技を決めるのをやめた。定期テストはなくして、単元ごとにテストをし、何回でも子供はチャレンジできるようにしている。子供は負担感なくわからないことをすぐに理解できるし、学校は定期テストの日がなくなるから授業日数が増える。
担任制をなくし1学年4学級を7名の教員で見ることにした。保護者面談は保護者が希望の教員を選択する。面談の際に選ばれなかった教員は事務担当として同席することで OJT になる。二人の優れた先生がいれば回る。工藤校長曰く、「教員がマルチプレイヤーになる必要はなくそれぞれの強みを活かせばよい」。事務の得意な教員、保護者対応の得意な教員、色々いて良いし担任制廃止はそれぞれの良さを発揮することになる。そしてもちろんその時々の子どもの実態に応じて最も最適な関わりのできる教師が柔軟に対応できるようにすることが子供のためになるからである。
工藤校長は「何のために」という目的をしっかり持ってそこに向けて行動をすることを大切にしていると言う。「小学校から一貫してそのことを考えるように育てれば、日本の生産性は上がるだろう。
また、『学校の働き方改革=学校改革』であり、先生の仕事を少なく、いかにこどもが自分で勉強したくなるように出来るようにするか」とも言う。まさに選択と集中であり、WLBC関西学校プロジェクトが目指すところであり大変共感した。
教育活動では例えば書初め。
例年やっているから当然のようにやるのではなく、なぜやるのかを考えるという。
また、リーダーシップ教育とは、「うまくいかないこともある。同じ方向を向いてくれない人も当然いる。そんなときどうやって道を切り開いていくかということを伝えるものでなければならない」と言う。確かにこういう視点で世界を捉えていれば、荒波や逆境でも想定内だと思えることだろう。
そんな工藤校長が麹町中学校に赴任して唯一苦しかったことは、二泊三日のスキー教室を廃止した時だと言う。子供も保護者も楽しみにしていたものであったので来年度からなくなると伝える時は反対も出た。しかし、目指す子ども像に向けて増やすべきことのためなのだということを保護者に対して丁寧に説明をし理解を得た。



工藤校長の実践から感じたことや気づき
- 先生の善意に頼るのではなく、企業や大学生、同窓会などに学校の応援者になってもらいうまく巻き込んで、学校運営されていること。
- 強い課題意識をもち目的に向かって選択と集中し、前例にとらわれないアイデアで乗り越えられたこと
そしてこれらは、これまでお話を伺った学校改革を進めた校長先生に共通することでもある。
同行したメンバーの感想
- 校長の想いが、たくさんの人の心を動かし、改革できることを証明していることにとても感銘を受けました。
- 最近、学校って何だろう?と漠然とした疑問への答えのヒントを得られたような気がします。あと、目標と手段の取り違えの話は、学校現場で毎日のように起こっています。でも、工藤先生がおっしゃったように悲観せずに、できることから学校現場を変えていきたいと思います。学ぶことが多すぎて、あっという間の3時間でした。
- 教員と委員会経験のみで改革を進めた方はあまりないのでとても勉強になりました!
- 一般的な経歴の校長先生は全員冒険できるという確証になりますね。
ありがとうございました!(澤田)