第3回 学校ワーク・ライフバランス シンポジウム
日時:2018年3月31日 14:00〜16:30
場所:神戸産業振興センター
テーマ:授業

第3回目の今回はオンライン参加できるようにしたことが新しい試みでした。
ZOOMというアプリを使って自宅から会議URLにアクセスするだけで、リアル会場と双方向のやり取りも可能です。
オンラインだからできたこと2つ
- 「子どもの育ちと先生の時間を両立する授業プラン」創始者である、元・東京都小学校教員の川崎さんには、なんとオランダから登壇していただけました。
- リアル参加予定だった方が当日急に会場に来られなくなり、自宅からオンライン参加で対応させていただきました。従来なら参加をあきらめるところですが、喜んでいただけたようです。

テーマ:授業
今回のテーマは授業でした。
- そもそも何を育てたいのか
- いい授業って何なのか
- 豊かな私生活が豊かな授業を作るのでは
といった議論になりました。詳しくはスクロールして議事録をご覧ください。
<学校関係者の声>
- 仕事のクオリティとそれにかける時間は比例しないという考え方は大切です。今までの自分の捉え方を変えようと思います。
- 授業とは「教えること」からの脱却も必要だと思った
- 時間をかけることが良いとは感じていないけどかけたくなる
- 教師が「教える」姿勢から、子供同士が「学び合う」環境を作る
- 授業にかける時間を生み出すための働き方改革ではあるが、授業力をつけるための発想の転換が必要 。
- 実質的な働き方改革を、授業の問い直しの観点からどのように進めていくことができるのかということを深く考え行動するための良いヒントをもらうことができました。
<学校外の方の声>
- 今回参加できて本当に良かったです。先生達の時間についての考え方も知ることができました子供たちのために本当に必要なことは何か常に考えていきます。
- 学校現場からの生の声を聞くことができたのは貴重な体験でした
- 先生方の極端な長時間労働の国の未来が不安
- そんなに豊かな人生が送れるので教師になりたいと学生に追われる憧れられる良い仕事になるといいなと思います


以下議事録
(澤田)
開催趣旨:学校における働き方改革とは、単なる残業削減ではなく「学校戦略であり、子どもも教職員も笑顔になるもの」
高槻市立北大冠小学校 取り組みの成果と課題 17%働きやすさがアップ
80時間超の教員 12名→4名に
- 今奥校長の声 この取り組みは授業と相性がいい。学校改革になる。時間を生むだけのつもりだったが教育過程を見直すことになる。学校目標を目指して教職員みんなで学校をデザインするきっかけになった。
- 支援活用事例:ヒアリング、アセスメント、計画作成、担当者のアドバイザー、全教職員向けの取り組み、保護者向けの取り組み、教育委員会向けの取り組み
(福井)働き方改革コンサルタント。PTA会長、副会長を経験。その際、教員の働き方について感じることがあった。教育の質が低下している感が否めない。余計なことに時間を使いすぎ、目先のことばかりに走っているように思う。どんな職場においても「働き方改革」の目的は一緒。
国は時短ばかり言うが、仕事のクオリティの向上が基本。自治体でも企業でも学校現場でも同じ。特に医療現場と学校現場の働き方がいびつ。非常に専門性が高いからかもしれない。「子どものために」「患者のために」・・すべてを凌駕する。そういうところを変えていかないといけない。先生たちの人生そのものがうまくいかないのでは。時短だけでは意味がない。
今日のテーマは「授業」。教員の最も大切な仕事はこれ。忌憚のない意見を。授業の中身そのものではなく、どういう授業をしたら質が高まるのか、というところを今日の着地点にしていく。
(川崎)=オランダからZOOM登壇
「子どもの育ちと先生の時間を両立させる授業プラン〜子どもも幸せ、先生も幸せ」
オランダ在住。11年間公立小の教員経験。イエナラボ主催。イエナプラン=カフェのような感じでおしゃべりできるように
昨年9〜12月イエナプラン教育専門教員研修3ヶ月を受けた。
公立小学校の11年間。長男出産後、毎日13時までの育児短時間勤務→無理だった。次男の時はフルタイム復帰。
授業のやり方を変えないことには保育園のお迎え時間に間に合わない、両立できない
→子どもの育ちと先生の時間を両立させる授業プランを確立
授業準備時間をとらなくてもやれるプラン
計画表を毎回15分ぐらいで一週間分作る。子どもたちが自分で計画を立てる
自律授業の時間を毎日1コマ。子どもたちが自律的に家庭学習も進めたので保護者にも評判がよかった。「Find アクティブラーナー」ですべての授業を見られる。
イエナラボ 情報発信 ワークシェアリング
お互いに先生同士で信頼しあって4時ぐらいに帰る。オランダではワーク・ライフバランスのとれた生き方をしている。
(澤田)10年小学校の教員を経て今、外から支援している。「WLB=仕事が残っているのに帰ること」ではない。定時に帰って前よりも成果を出す働き方ができた。教員も子どもも幸せになると思っている。WLBが実現したらどんないいことがあるか
・大阪ラグビー部顧問
朝練に頼らない指導で準優勝/子どもに計画を立てさせる/授業もそうしている/前に立って話すことはほとんどしていない/学校の中だけではそういう指導方法はできなかった、外で学べたからできた(=指導力アップ)
・研究授業の負荷を小さく回数を増やす
公開授業予告票、よそゆきの授業をやめる、保護者がいつでも出入り自由
事前準備は簡単に、昨年の指導案を次の担当者がそのまま使う など
「学びの責任」、「ラーニングピラミッド」の図紹介
(妹尾)=課題提起
欲張りな二兎を追う 働き方改革と授業の充実は可能か?
「授業もよくしたい、勤務時間も短くしたい」 どっちかだけでも大変なのに両方できるのか
藤原文雄編著『世界の学校と教職員の働き方』より「子どもにも教職員にも優しい学校への転換」が必要
授業準備の時間が足りない・・・95%
仕事に追われて生活のゆとりがない・・・8割近く
こんな状態で新学習指導要領の目指す、質の高い教育はできるのか?
(新学習指導要領は非常に高い理想。正解がないことを自律的に考え、卒業後も通用するような能力、いろいろな人と関わる力 等をつけることが求められている)
働き方改革は教師がラクしたいためか?
参考:出口治明 人は3つのことから学ぶ。
「本」(失敗は本につまっている)、「旅」(気になる現場に出かけていく)、「人」長時間労働だとこの3つが細る。教師にとっての学び。面白い授業のタネ。
学校も家庭も地域もお互いに勤務時間を意識した働き方を
スポーツ庁の運動部活のガイドライン参照
間違いだらけの働き方改革
教育委員会からの指導が厳しくなる。労基が繰る形を作ろうとする。本部からの管理が厳しくなり校長は職員へ「早く帰れ」の連呼。自宅残業増加、教員の志気がダウン、離職者の増加、残った人への負担が増加・・・
多忙の内訳をする必要がある。「前例、伝統を疑え」
何のためにやっているのか?指導案を作るための授業研究会か?
指導案は1枚紙で。チャレンジしたいこと、もやっとしていることを教室の前に書いて説明
問題意識の高いテーマでworkshop+今後のアクションも立案 など
(福井・澤田・妹尾のトークセッション)
企業も学校も同じ 企業は利益という客観的なものがあるのにも関わらず、理解できない経営者が多い。なぜなら「職場に長くいることがロイヤリティ」だと思っているから。存在意義を感じている。
学校で作っている教育目標
思考停止ワード →「子どもが喜んでいるから」「子どものためだから」
自治体の職員も同じ「市民のため」「市民の満足度を高めるため」
以下は参加者がポストイットに書いた「知りたいこと」「話を聞いて感じたこと」

- 教育委員会、保護者との関わり方:教育委員会はどうすれば動いてくれるのか?保護者に関わってもらうためには?世間のみなさんはどう思うのか?
- 授業の準備、時間のあり方:どうやって時間を作るのか?もっと時間があったら何をしたいか?
- 教員、教頭はどう進めるか:教員同士で話をするには?教頭の忙しさは何とかならないのか?
- ハード面の見直し
- 目的や成果は明確か
「どうして変わらない?」(福井からの問いかけ)
危機管理の意識が強く、前例を変えない方が安心
→子どもの命や安全に関係ないことは変えてみては?
実際は教師が前に立っている授業がほとんど。リードすることで安心する、これぞ教師の仕事だと。
ベテランの先生は教え込まなきゃいけないと思っている。新しいやり方をすると「これで学力が上がるんですか」と聞く。一歩踏み出す難しさ。新しいことをやってみる怖さがある。企業のキーパーソンはボス。経営者の決断で全部変わる。学校はそうではない
文科省が強いイメージがあるが、大枠しか決めていない。
入学式の日程、運動会の内容、修学旅行などほとんどのことは校長が決められる。
保護者は、決断をする・チャレンジする校長を応援するべき。
校長がやろうと言ってもクラスの中まで見えないので教師は平気で無視できる、モニタリングが難しい
ボトムアップとトップダウンの両方が必要。
時間を短く質を高めるためにはどうしたらいいかを校内研修の一部にしては?
地域によっての違い。教職員の発言権の大きさの違いもある
企業では最も避けなければならないのは「属人化」。
(以下、ポストイットの中から、今日のテーマに一番近いことに絞る)
「授業準備にいくら時間を費やしてもいいのか?」
気持ちはわかるけど招福しかねる。多くの教員が過労死ラインで働いている。
時計の針が一周したら過労死ラインを超える、それプラス週末の部活。
健康を害するほどはやってはいけない。「本」「人」「旅」の時間をとれないほどに働くことは必要ない。
授業の準備は「研究」なのか?素材作りじゃないのか?
時間外勤務手当はつかない働き方。先生への要望が増えている。
最低限の授業準備はワークの中で。それ以上のことはライフで。
どんどん外に出て授業のアイディアを見つけることが大事。
働き方改革は本来、クリエイティブで楽しいこと、いろんなアイディアがあるはず
人は起きてから13時間たったら酒気帯び運転並み。
睡眠時間を削って子どもの前に立って、一番高いパフォーマンスができるのか?
高いクリエイティブな仕事は短時間労働の中でしか生まれない(アーティスト以外)
一般企業・・・ライフとワークは切り離せる。
以下、参加された方のご意見
- ライフとの線引きが難しい 授業準備、教材研究などは経験が少ないので時間がかかる
- 1時間作った内容でうまくいかなくて、10分で作ったことがうまくいったこともある
- ワークの話:1時間授業するのに最低2時間かかる 振り返りに30分かかる時間をかけるというよりはいろいろなことを見たり、そのためにはいろいろなところに出かけてインプットしたい。でも手を抜きたくない
- 本気で時間をかけて取り組む「時期」がある 自分で決めてやろうと自主的にかけてやることはいい、それは充実感 負担感からの時間は疲労がある 見栄とか飾りとかに時間をかけるのは全くいらないと思う
- 単元や内容によって時間をかけなくてはならない時がある。実験とか器具の用意は適当にできない。見せる授業、外向けに顔色を見ながら作っているので子どもに落ちていないこともあった、反省。
- 時間は最小限にとどめたい、研究は楽しい時間。考えている時間が一番幸せ。達成感として返ってくる。それが支え、楽しい
(登壇者)かける時間とクオリティは比例しないが時間をかければかけるほどいいものができると思っている?自分の達成感のために時間をかけることで怒られた 短い時間でもいい授業ができる
新学習指導要領になる中で、もっと質の高い発問、考えさせる授業をするためにはある程度の時間をかけざるを得ない。でもキリがないので注意が必要
発問を考えている時間、器具を揃えている時間、仕事の内訳の中でここまでかける必要があったのかと振り返ったり、時間感覚を鍛える必要がある(例:パワポ病、タイマーで時間をはかるように)
オリジナリティは模倣の上にある。全くゼロからのオリジナリティじゃなくていい。具体的なヒントは研修の場で交流してほしい
「プアなイノベーションより優れたイミテーション」を
2・8の法則 2割で8割の成果が出せている。自分の授業準備を疑っている。どれくらいかける価値があるのか。疑ってかかる。
例:教室に置く落し物箱作りに1時間かけてしまったことも
→企業なら上司から叱責される。学校ならほめられる。無駄な時間を作っていることをお互い知らないことも問題かもしれない
例:子どもたちのノート集めて毎日書き込んでいた 30分/日。1週間分で3時間。
子どもたちが自ら考えるようなことを学ぶ時間にそれを使えば、もっとできることがある。
例:理科 授業の中で準備も片付けもする、と自分にコミットする
例:分刻みのスケジュールの先生。教室に上がる階段で考えている。校内研修の準備もしていない。
仕事って経験とスキルが上がれば、かかる時間が短くなる法則があるはず
例:2時間の講演に15分かける。パワポ4枚。スライド20枚の時と効果が違わない
一定時間はかかるが、この時間をスキルを上げることで短くするという発想はないのか?
例:部活の問題。クオリティの高い練習は時間が短い。グレードが上がる程時間が短くなった経験。
部活が長いところに強いところはなかった。競技のことは競技の時に考える。
そうでないと、特に子どもはバーンアウトしてしまう。休みは大事。
<グループの中で共有タイム>
以下、各テーブルで出た話を全体共有
- 今やっている仕事にどれ位時間をかける価値があるのか、という意識を持つ必要がある
- 授業にかける時間を生み出すためには発想力の転換が必要
- その人じゃないとわからない仕事が多い
- ライフの充実、オンオフのきりかえをうまく。持ち帰らないための工夫が必要
- 意識を変えていかないとあかん。授業の質をあげたい。生徒指導、不登校支援
・・・があって本来の仕事にいけない。人材。外部機関。外部人材の導入も必要 - 評価されるのは「授業、部活、生徒指導もできる人」 評価を見直すことが大切
- 時間を意識して働くことが薄かった。成果に対する着目
- 時間をかけることの意味。時間をかけられるチャンスがあることが大事。柔軟性
- アクティブラーニングなど。自分たちが学んでこなかったスタイルで教えなければならない
- 子どものために本当にしなければならないことは何か、授業って何かを根本的に考えていかなければならない
- 思考停止も危険。何をしていくのか?
- これから教員になろうとする学生に何を伝えていくのか(大学教員)
- 専門職として採用されているのに専門職ほど裁量がない。働き方改革と専門性を考えていくことが大切
(川崎)教員自身がどういう授業がいいのか、主体的な子どもに育てるのかを教員で話し合うことが大切。
(妹尾)長くやれば効果的という神話。短時間でもできることはある。今までの文化、やり方を否定する必要はないが疑うことが大事。
- それって何のためだっけ? 簡略化できることがある。「子どものため」→もっと具体的に
- 多忙の内訳。何にどれくらい時間をかけているか。
先生はたくさんの仕事を押し付けられている。ストップウォッチを持ってはかってみる。 - 機会費用(オポチュニティコスト)
例:二人で研修に行った報告書 新人が書くと3時間、30分で書ける自分がやったほうがいい?
→ 新人にはできない価値のあることに30分かける。時間の価値。
自分が30分かけてやることで、奪われる価値もあることを考えてほしい
(澤田)いい授業って何?先生が疲れることではない。
働き方改革をやって20分早く帰れるようになった頃「そのせいで今までゆっくりできていたことができなくなるから何だか嫌だ」
よく出る声:推進している人にとってはそれが多数派なのかと勘違いしてしまう。
20分早く帰れることで支障ない、私生活の時間が増えて嬉しいといったプラスの変化を感じている人がいても、嫌がっている人がいる横で言い出せない。しんどくなった人たちのケアがいる。
いつまでも長時間勤務のままの人。いろんな理由がある。個別で見ていかなければならない。
(福井)「20分早く帰れるけど、せわしない」企業でもよく言われる。「和気あいあいとする時間がない」それってあたりまえ。働いている時間に和気あいあいとする時間、ほんわかした時間、そこさえも詰めて働き方改革をしてほしい。
心豊かな生活、自分の人生をきちんと歩んでいる人に子どもを育ててほしい。短い時間はパフォーマンスを発揮することに使う。豊かでしっかりした人生、それをモデルに。「そんなに豊かな人生が描けるなら教員になりたい」という学生が増えるはず。